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梶川義人の「虐待相談の現場から」

支援者発想のパラダイムシフト

 対応チームが辿る5段階の流れにしても、個別の支援シナリオにしても、それらの基礎になる事前評価にしても、簡単にグレードをアップする方法があります。それは、発想を転換してみることです。

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 たとえば、「どうしてそうなってしまったのか」など、マイナスの側面ばかり考えているのではなく、「どうしてその程度の虐待ですんでいるか」もあわせて考えてみるわけです。視野が開けて見通しがたち、蛸壺状況からの脱却も夢ではなくなります。

 虐待の事例であれば、「どうして息子は父親を殴ってしまうのか」だけではなく、「どうして息子の暴力はその程度ですんでいるのだろう」とか「どうして殴らない場合があるのだろう」と考えてみます。すると「息子が殴るのは、父親への過去の恨みつらみからだ」というだけではなく、「父親への尊敬の念もあるからその程度の暴力ですんでいる」とか、「父親が口答えさえしなければ殴らない」など、支援のヒントになるアイデアをたくさん得ることができます。

 物事は両面価値的ですから、一つの客観的事実に対しても、ネガティブな評価とポジティブな評価ができます。丁度半分になったペットボトルの飲み物を、「まだ半分ある」といったり、「もう半分なくなった」といったりするようなものです。ですから、比較的簡単に発想は転換できます。にもかかわらず、弱みと強み、長所と短所、メリットとデメリットなど、視野を広げる効果は絶大です。

 私はいつも、具体的な方法として「T字分析」をお勧めしています。方法は簡単で、図のように、虐待という問題や問題状況について、何がどうだから、「そうなってしまう」のかというマイナスの要素と「その程度ですんでいる」のかというプラスの要素を、左右に箇条に書き分けるだけです。

図 T字分析のイメージ kajikawa_t_ji_bunseki.jpg

 形が「T字」になるのでこう呼ばれますが、活かし方としては、緊急事態を除いて一般に、先にプラスの要素を促進させてからマイナスの要素を解消するようにします。北風と太陽の寓話でいえば、太陽的アプローチを優先するわけです。これによって、うまく介入拒否をかいくぐれたり、蛸壺状況に陥りにくくなったりします。

 こうしたことは、従事者による虐待の対策にも応用できます。たとえば、「従事者による虐待は発生しなくて当然だ」とだけ考えるのではなく、「発生しても当然だ」と考えてもみるのです。すると、従事者は、虐待しないように気遣ったり、恐れたり、頑張ったりと、案外あれこれ努力していることに気づきます。あとは、こうした努力を褒めたり労ったりすることで、自律的な虐待防止へのインセンティブはおおいに高められます。


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プロフィール
梶川義人
(かじかわ よしと)
(仮称)日本虐待防止研究・研修センター開設準備室長、淑徳短期大学兼任講師。
対応困難事例、家族問題担当ソーシャルワーカーとして約20年間、特別養護老人ホームの業務アドバイザーを約10年間務める。2000年から日本高齢者虐待防止センターの活動に参加し、高齢者虐待に関する研究、実践、教育に取り組む。自治体の高齢者虐待防止に関する委員会委員や対応チームのスーパーバイザーを歴任。
著書に、『高齢者虐待防止トレーニングブック-発見・援助から予防まで』(共著、中央法規出版)、『介護サービスの基礎知識』(共著、自由国民社)、『障害者虐待』(共著、中央法規出版)などがある。
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