ページの先頭です。

ホーム >> 福祉専門職サポーターズ >> プロフェッショナルブログ
梶川義人の「虐待相談の現場から」

心のコップと支援のシナリオ

 当事者への接し方についてお悩みの方は大勢いらっしゃいます。関わる機会は少ないのに、いったん関わると、それなりの結果を出すように求められるため、自信を持ちにくいのかもしれません。そこで、今回は、一般的な来談者へのオーソドックスな支援のシナリオをみてみます。介入拒否や精神障害など、特別な配慮の要るものは次回に譲ります。

続きを読む

 初見の相手は大抵緊張していますから、アイス・ブレイクから始めます。時間通りに来談したことを「褒める」、「労う」、差し障りのない「雑談をする」などです。連絡先や主訴や希望を記入する帳票に、この役割も担わせられるなら一石二鳥なのですが。

 そして、一息ついたら、じっくり思いのたけを吐露してもらいます。「話しやすいところから、話しやすい順番で」が基本です。時々、相手の心情を、その話しの筋をなぞるようにまとめると、一層相手は話しやすくなります。また、取り留めのない話をする場合でも、うまくまとめれば、本筋に戻せます。

 初期には、話すことで心に余裕をもってもらうように徹します。水で一杯のコップに水を注ぎ足すには、まずはコップの水を空ける必要があるのと同じで、アドバイスは、無駄や誤解のもとになるので控えるのが賢明です。それに、話したことは、後の段階の「考える材料」になるのですから、材料の豊富化に努めない手はありません。そのため、理想的な時間配分は、先方が9割、こちらが1割ぐらいです。「それで?」「というと?」「その点を、もっと詳しく教えて下さい」などが常套句でしょうか。

 また、こうした積極的傾聴の技法を用いるのには、話してスッキリした当事者に洞察(自覚ないし客観視)を促し、自らがその囚われから脱するようにする目論見もあります。「問題や問題状況は、当事者が無意識に何かに囚われ、真実がみえないから発生する。だから、当事者自らが、囚われていたことを洞察すれば、真実がみえるから、問題は解消する」という考え方です。

 つぎに、心のコップの水が空いて余裕ができたら、改めて問題や問題状況について考える中期に入ります。たとえば、リフレーミング(意味付けを変えて伝える)技能により、当事者が自ら問題を解消していけるようにエンパワーメントします。また、例外探し(「殴らずに済むのはどういう時ですか?」)や、スケーリング・クエスチョン(「10点満点で今のご気分は何点?」「前回より1点増えたのは何故?」など)の技法などを使い、当事者が自ら実現可能な近未来像を描いて、可能なもの(大抵は些細なこと)から実行していくことで、問題が解消するように図る、解決構築志向の支援スタイルをとります。

 前者は「問題は、当事者の能力発揮が不十分なので発生する。当事者の能力が十分発揮されるようにエンパワーすれば、問題は解消する」、後者は「問題発生の因果連鎖は不明だが、全ての出来事は時間を軸につながっている。先立つ出来事が変われば、後の出来事も変わる」という考えに基づいています。

 終結期は、問題とその発生及び解決の仕組みを図式化したうえで(ケースフォーミュレーション)、対処の仕方を考えたり教えたりし、当事者が自ら問題の解消を図るように行動する、認知行動修正的な対応になります。「問題は当事者の誤った捉え方や対処の仕方によって発生する。だから、当事者が正しい方法を学習すれば、問題は解消する」というわけです。

 以上、1回の面接時間が1~2時間として、初期設定のゴール達成までが10回以内、具体的には、初期1~3回、中期1~4回、終結期1~3回といったイメージでしょうか。


※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

コメントを投稿する




ページトップへ
プロフィール
梶川義人
(かじかわ よしと)
(仮称)日本虐待防止研究・研修センター開設準備室長、淑徳短期大学兼任講師。
対応困難事例、家族問題担当ソーシャルワーカーとして約20年間、特別養護老人ホームの業務アドバイザーを約10年間務める。2000年から日本高齢者虐待防止センターの活動に参加し、高齢者虐待に関する研究、実践、教育に取り組む。自治体の高齢者虐待防止に関する委員会委員や対応チームのスーパーバイザーを歴任。
著書に、『高齢者虐待防止トレーニングブック-発見・援助から予防まで』(共著、中央法規出版)、『介護サービスの基礎知識』(共著、自由国民社)、『障害者虐待』(共著、中央法規出版)などがある。
メニュー
バックナンバー
その他のブログ

文字の拡大