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梶川義人の「虐待相談の現場から」

初めてご質問を頂きました

 ブログを連載し始めて初めてのご質問を頂きました。5月9日に掲載した「緊急性と虐待の判断」を読んだ読者の方からです。
 とてもうれしいので、この場をお借りし、はりきってお答えします。

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 さて、ご質問についてですが、「養護者ではない孫の暴力は、高齢者虐待防止法による対応には値しないのか。その場合、どんな法律を根拠に支援すべきか」という、かなり専門的なものです。

 事情は少し複雑ですが、結論から申し上げると、孫が成人であれば、養護者による高齢者虐待として扱われることが多いと思います。「養護」自体が曖昧なうえに「現に養護している」ことも確認しにくいため、あまり限定的に捉えないのが一般的だからです。

 あまり限定的に捉えないのは、厳密に捉えすぎて高齢者虐待防止法(以下、防止法)が適用できず、被虐待者を救済できないのはで困る、という配慮からです。実際、「厳密には、防止法の定義に該当していなくても、防止法に準じて対応する」としている自治体も少なくありません。

 これを逆に表現すると、実務上、養護者として扱わないのは、明らかに「養護が難しいないし養護する立場にない」場合に限られるということです。

 たとえば、「障害等のために判断能力が不十分で、後見人や保佐人がついているのだから、他人の養護は難しいだろう」、「要介護状態で、自分が日常生活に介護を必要としていのだから、他人の養護は無理なんだろう」、「未成年者は、本来養護される立場なのだから、養護者になるのはおかしいだろう」といった具合です。厳密に言えば養護している場合もあるので、必ずこうした判断になる、というわけではありませんが。

 ただし、孫が経済的虐待をしているなら、孫が養護者でなくとも、防止法は適用できます。防止法第2条第4項第2号には「養護者又は高齢者の親族が当該高齢者の財産を不当に処分することその他当該高齢者から不当に財産上の利益を得ること」とあり、孫は親族だからです。

 また、子どもが、祖父母に対して虐待(身体的、性的、心理的)している孫を放置しているようなら、防止法第2条第4項第1号ロの「ネグレクト」にあたるので、防止法に基づいた介入はできると思います。

 いずれにせよ、防止法を根拠にしてできることのうち、特徴的なのは立入り調査くらいのものです。法文のなかには度々「相談、指導及び助言」という語が出てきますが、これはなにも防止法を根拠にしないとできないことではありません。たとえば、虐待事例への対応でよく出てくる福祉の措置も成年後見制度も、地域包括支援センターの権利擁護業務も根拠は防止法とは別の法令です。ほかにも、老人福祉法や介護保険法は言うに及ばす、刑事法や民事法もありますし、孫が未成年なら、児童福祉法や少年法の適用もあり得ます。

 ですから、たとえ防止法が適用できなくても、法的根拠のある支援は展開できるのだと言えます。しかし、多専門職・多機関間協働で、専門や所属を異にする者がチームとなって対応するため、そのための術を別途身につける必要があります。虐待者である孫に不登校や非行の問題があったのですが、子ども(孫の親)に対して厳しく孫に接するように求める高齢者支援側と、厳しく接することを求めない子育て支援側の意見が対立して、連携が失敗した例もあります。


コメント


私は最近、関東で新しくオープンした施設で働いています。
ですが、私は注意力散漫と、コミニュケーションが下手で、何をやってもダメです。
先日上司にも全体を見る視野がないなど。
一度聞いた事を確実に実行できずにいる自分の不甲斐なさで利用者の方を支援できないでいます。
注意しようと心がけようとすればするほど空回りする私は介護経験三年もあるにも関わらずこのような事態になっっています。
正直どうしたらいいかわかりません。
どんなに先輩方に教わった通りしても上手く出来ず、向いていないのかと思い始めています。


投稿者: MIKU | 2013年08月10日 20:46

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
梶川義人
(かじかわ よしと)
(仮称)日本虐待防止研究・研修センター開設準備室長、淑徳短期大学兼任講師。
対応困難事例、家族問題担当ソーシャルワーカーとして約20年間、特別養護老人ホームの業務アドバイザーを約10年間務める。2000年から日本高齢者虐待防止センターの活動に参加し、高齢者虐待に関する研究、実践、教育に取り組む。自治体の高齢者虐待防止に関する委員会委員や対応チームのスーパーバイザーを歴任。
著書に、『高齢者虐待防止トレーニングブック-発見・援助から予防まで』(共著、中央法規出版)、『介護サービスの基礎知識』(共著、自由国民社)、『障害者虐待』(共著、中央法規出版)などがある。
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