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秋山映美の「監獄から社会へ」

アメイジング・グレイス

 「アメイジング・グレイス」という映画を観ました。アメイジング・グレイスは日本でも良く歌われているのでご存知の方も多いかと思われますが、この歌は、1700年代にイギリスの牧師ジョン・ニュートンが作詞をした歌です。
 ジョン・ニュートンは牧師になる前は、奴隷船で働いていたのですが、ある日、船が嵐に遭い、転覆しかかったそうです。その時に初めて神様に祈りをささげたところ、難を逃れることができたのです。その後、牧師になり、「奴隷船貿易に従事し、2万人もの奴隷を死に追いやったこんな罪深い私でも神は救ってくれた」と強く後悔をし、この「アメイジング・グレイス」を作ったのです。

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 映画の主人公、ウィリアム・ウィルバーフォースが師事していたのがジョン・ニュートンです。ウィルバーフォースは21歳で国会議員に選出され長い年月、イギリスの奴隷貿易廃止の活動に取り組んできました。
 20代の若いころから奴隷制反対運動にかかわり、奴隷貿易廃止法案を議会に提案し続け、20年かけてやっと廃止することができたのです。

 映画の中では、当時、奴隷がアフリカから船で運ばれる際のひどい扱いが描かれていました。アフリカで600人を乗せ来た船では、そのひどい扱いにより200人は死亡し、また嵐にあえば、病気で弱っている人から海に投げられていました。
 このようなひどい扱いについての話を聞き、ふと、グアンタナモ基地に移送された人の証言を思い出しました。移送の手段は、18世紀は船で、21世紀は飛行機でという違いがあるものの、移送する人の手や足に枷をつけたり、狭いところに動けないように閉じ込めたり、人を人として扱っていない様子は21世紀になった今でも行われることです。

 また、アフリカで奴隷にするために誘拐された人たちは、南アメリカのプランテーションに連れて行かれ、そこで、低賃金・重労働のさとうきび畑で働かされていて、労働中の事故で命を落とすことも多かったようです。
 この映画の監督もインタビューの中で答えていますが、現在は奴隷貿易こそ表だってはありませんが、人身売買などが行われることもあり、また、東南アジア、南アメリカでは大規模なプランテーションが多数あり、そこで働いている人たちは、低賃金・重労働で農薬や農器具により大けがをしたり命を落としたりする人もいて、18世紀の奴隷貿易が行われていたころと同じような状況です。
 もしかしたら、産業も拡大し、たくさんのものが作られるようになった今は、当時よりももっとたくさんの人が人権を侵害され、ひどい扱いを受けているのかもしれません。

 映画の中で、ウィルバーフォースは、何度も何度も、そして時には作戦を変えて奴隷貿易廃止法案を議会に提出し続けるのですが、そのたびにヤジをとばされ、否決されます。
 それでもあきらめずに改革を成し遂げる姿、当時の社会状況から多くの人が難しいと思っている政策を実現する姿を見て、あきらめずに取り組むことの大切さをあらためて感じました。


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プロフィール
秋山 映美
(あきやま えみ)
NPO法人監獄人権センター
理事
明治大学大学院法学研究科修士課程を修了。明治大学法学部在学中から、監獄人権センターにボランティアとして参加。受刑者や家族などから届く、月200件にものぼる相談の手紙にボランティアと協力して対応したり、受刑者の現状を世に訴えたりなど、刑事施設内にいる受刑者の人権に関わる活動を続けている。
監獄人権センターHP
 http://cpr.jca.apc.org/
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