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読者が介護福祉の「専門性」を考える道筋を示したい



 “理論をもって介護できる人が現場にいない”

 著者である黒澤貞夫先生がいつもおっしゃっている言葉です。

 たしかに、介護現場の方は仕事で覚えたことを実践するのでいっぱいになり、理論的な部分をもつというのは難しいと感じます。入社してまだ数年しかたっていない私も、介護ではないですが、実際仕事を覚え、進めていくことでいっぱいになります。

 しかも、介護の「専門性」を知るために必要な理念、尊厳、哲学といった言葉は敬遠されがちです。でも、こうしたところから切り込んでいくことは、「専門性」について「なんとなく」ではなく、より説得力のある形で意識することにつながっていくのではないでしょうか。

 日々の介護で行う生活支援には、専門性は関係していないのではないか、誰にでもできるのではないかという考えもありますが、本書では生活支援の実践には根拠があり単純なものではないことを示しています。そして、介護というのはかけがえのない仕事であるということを伝えています。
 哲学や思想など、根幹となるところから解説し、読者の方々に介護の“質”の基軸となる「専門性」を考える道筋を示したいというのが、黒澤先生が本書に込めたねがいです。

 黒澤先生に初めてお会いしたのは企画内容の打合せのときでした。今の介護の現状に危惧しながらも、学べるうちは学んだことを伝えていく――80歳をこえながらも、常に学びの姿勢を忘れず、これから先のことも見ている姿が印象的でした。

 編集を進めていくなかでは、先生と生徒が講義を受けているような時間を過ごすことができました。ボードを使っての説明や、私の質問が先生にとっても新鮮味を与え、有意義な時間になったと聞いたときはとても嬉しかったです。黒澤先生の“学ぶ”“学びたい”意欲はすごく刺激になります。いくつになっても発見があるのは楽しく、仕事のやりがいにもつながっていくのだという姿勢を感じました。

 本書には、多くの学ぶうえでの糧となる社会福祉や哲学など、様々なジャンルの文献からの“言葉”もでてきます。日々、自らの業務の専門性について問うために、色々な視点からその“言葉”に触れるのもよいのではないでしょうか。

 最後に、黒澤先生はこのテーマの探求についてよく口にされる言葉が私は好きです。
「“専門性”への探求は山の頂を目指すようなもので、その登り口は幾通りもある」と。そのためにも本書が役に立っていけばよいなと思います。

(第1編集部 三浦功子)

介護福祉の「専門性」を問い直す

著者:黒澤貞夫
サイズ:A5 198頁
価格:2,400円(税別)